井川香四郎著「権兵衛はまだか」
<あらすじ>
大名、豪商も頭を下げた悪徳医師・良順に振りかかる不幸に世間は冷たかった。そのすさんだ心を救ったのは捨てられた子犬だった。犬が教えてくれた人の道。自分の分け前がなくなっても人々に惜しみなく与えた大店の養子。その男が手にした百両の使い道。ほか、一家心中を願う家族を救った謀反人の優しさに、吉良邸に討ち入った大石内蔵助の真意が語られる中篇、全四篇を収めた好評シリーズ第九弾。
今回はいつもの手法とは違った作品が多く、忠兵衛が大活躍というものではなかったがなかなか味のある4編だった。特に後半2編は面白かったなぁ。まったくの聞き役に徹していて、時々思い出したように口を挟み、話を促す。そして人知れず手を回し、やっぱりいい奴だなと読者に思わせる。上手いなぁ。