宇江佐真理著「黒く塗れ」
<あらすじ>
お文は身重を隠し、年末年始はかきいれ刻とお座敷を続けていた。所帯を持って裏店から一軒家へ移った伊三次だが、懐に余裕のないせいか、ふと侘しさを感じ、回向院の富突きに賭けてみる。お文の子は逆子とわかり心配事が増えた。伊三次を巡るわけありの人々の幸せを願わずにいられない。
何がなにやら訳が判らなくなっていたので、「さんだらぼっち」を読み返し、続けてこれを読んだ。おかげですぐに伊三次の日常に入り込めた。いいね、これ。作者のあとがきにもあるが、けっして捕物帖ではなく、それに伴う伊三次の日常を描いている。それが何とも言えない味がある。お文もいいし、大家の八兵衛もいい。苦しんだ末にお文は子供を生み、直次郎とお佐和もハッピーエンドになった。心配事を抱えずに次巻へというのはめずらしい気がする。