井川香四郎著「けんか凧」
<あらすじ>
融通の利かない無骨な武門として幕閣に煙たがられている、三河以来の”かみなり”旗本大河内家。今日も切腹覚悟で諫言に及ぶ大目付の父・政盛と、毎日ぶらぶらと瓢箪様の一粒種右京が怒りの太刀を一閃、江戸の悪人どもを大掃除する。
これも昨年から始まった新シリーズで、4編から成る連作。幕府の要職につく父と、腕は立つが無益で毎日遊んでいる息子と、お互いが望んでいないにもかかわらず協力して事件の根を暴いていく痛快時代劇といった趣。親子で好きな女が同じというのも面白いが、何よりも2人の掛け合いがコメディで愉快だ。この中では、田沼意次が歴史に残る評判どおりの悪人となっているのも、いっそのこと白黒はっきりしてていい。時々著者のほかの作品ともリンクしているのも密かに楽しい。